第３夜　　言葉のなる木

　ある部族に不思議な力を持つ少女がいた。
　彼女はその力ゆえ、一族から尊ばれていた。
　その力とは、「言葉」を解（ほぐ）し、もっと美しい「言葉」を作る事であった。

　ある時、その少女は「木の葉」（「言葉」）を一本の糸に解き、それを再び房のように編みあわせて、葡萄の実を成らせた。
　その葡萄は非常に美しい緑色をし、銀色の葉に　その緑色が反射して輝いていた。
　「いずれ、この葡萄は朽ち果てるかも知れないけれども、今は、この世のすべてを　美しい葡萄（言葉？）でいっぱいにしましょう。」　と　彼女は言った。
　私は感動し　「僕にもそれを手伝わせて欲しい。」と頼んだ。
　なぜなら、葡萄が枯れていく責任の一端は私にあるのだから。

　やがて、木は成長し　どんどんと繁っていった。