第１夜　　ボイジャー探査機

　私はボイジャー探査機であった。
　地球を離れてから六年、既に海王星まで来ていた。
　これから　地球に帰ろうとしても九年もかかってしまうだろう。
　
　事故が起こった。　こんなに　遠くでは、地球からの援助は無理だ。
　だだ、地球との無線コンタクトだけが保たれていた。

　この惑星を過ぎれば、永遠に太陽系から飛び出して　一人でさまよい続けなければならない。
　私はプローブ探査機を持っていた。
　そのプローブは　海王星に突入し、大気の状態を調べることができる。
　プローブは　一度　海王星に突入すれば永遠に海王星から出ることは出来ないだろう。
　私は海王星に突入するか、それとも　永遠に宇宙をさまようか、早く決心しなければならなかった。
　私は　海王星の渦巻く大気の中に閉じ込められるよりは　たとえそれが虚空の空間であっても　広いスペースにいたかった。
 
　そして　私は太陽系に別れを告げた。
　振り返ると　大きな海王星の小さなリングのシルエットのそばで　太陽が弱く輝いていた。
　太陽はとても小さく、しかし　それでいて特別で　懐かしいものに見えた。
　太陽の近くに　とても小さく見える青い星が　私の故郷だ。　もう　永遠に見ることは出来ないだろう。
　次第に小さくなる海王星を見ながら　私はとても孤独だった。
　しかし　誰一人として見たこともない神秘の光景に接して、とても幸福だった。
　そして　これからどんな世界が見れるのかと　強い期待と希望を感じた。