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４章 CommonMPにおける計算制御 その１
４．１ 要素モデルの種別と派生関係
３章で要素モデル「MyDynamicWaveModel」を制作した時 親クラスを 未来型要素モデル親クラス（McForecastModelBase）から派生させました。
ところで、３章で作成したDLLの元となった プロジェクト「MyModel」の中には、「モデル型紙」というフォルダーが有り、この中に３種類の 要素モデルの型紙が準備されています。
ここで、型紙の親クラスについて 整理してみます。
セル型要素モデルから派生して 未来予測型要素モデル親クラス「McForecastModelBase」、現状計算型要素モデル親クラス「McStateCalModelBase」が
存在します。 第３章で作成した要素モデル「MyDynamicWaveModel」は 未来予測型「McForcastModelBase」から派生しましたが、何故 未来予測型から派生させたかは説明していませんでした。
実はこの２つの要素モデルは 演算の意味に大きな考え方の相違があります。
①未来予測型（McForecastModelBase）
現在時刻（T）の値から δｔ
後の状態を計算する要素モデル
ｙ[T+δｔ] ＝ ｆ（
ｘ[T] ）
②現状計算型（McStatecalModelBase）
現在時刻（T)のある値から、 現在の別な側面（状態）を計算する要素モデル
z[T] ＝ ｇ（
ｘ[T] ）
具体的例で説明すると
未来予測型は 時刻：Tの加速度、速度から、 時刻：T＋δｔ 後の 速度、位置を算出するモデルです。
一方、現状計算型は、時刻：Tの速度から その時刻：T
の運動エネルギーを算出するモデルです。
CommonMPの要素モデルとして ２つのモデル間でどのような違いがあるのかを調べてみます。
CommonMPをダウンロードした時に一緒にダウンロードされてくるプロジェクト「TutorialSampleModel」内に 「MyForecastModel」と「MyStateCalModel」があるので、この２つのモデルを利用してその動作を調べます。
プロジェクト「TutorialSampleModel」を CommonMPディバッグ環境で動作させる方法は ３．２章で示しました。
ここで、モデルの各メソッドがどのように呼ばれるかをトレースする為にログを設定します。 次に、下に示すように要素モデルを接続し、計算時間を２分として 計算を開始し、その時に得られたログを解析します。(ログが出力されるように HymcoModelDebug.cfg
ファイル内にクラス名は設定しておきます)
２分間の計算ログ（ModelDebugLog.txt）は下記の通りです。
s2013/06/23 22:00:00
<MyForecastModel[E210-15422-2362013]::Initialize>
s2013/06/23
22:00:00 <MyForecastModel[E210-15422-2362013]::DataFusion>
s2013/06/23 22:00:00
<MyStateCalModel[E412-15422-2362013]::Initialize>
s2013/06/23 22:00:00
<MyForecastModel[E210-15422-2362013]::ReadyCalculation>
s2013/06/23 22:00:00
<MyStateCalModel[E412-15422-2362013]::ReadyCalculation>
s2013/06/23 22:00:00 <MyForecastModel[E210-15422-2362013]::Calculate>
s2013/06/23 22:01:00 <MyForecastModel[E210-15422-2362013]::DataFusion>
s2013/06/23 22:00:00 <MyStateCalModel[E412-15422-2362013]::Calculate>
s2013/06/23 22:00:00 <MyStateCalModel[E412-15422-2362013]::DataFusion>
s2013/06/23 22:01:00 <MyStateCalModel[E412-15422-2362013]::Calculate>
s2013/06/23 22:01:00 <MyStateCalModel[E412-15422-2362013]::DataFusion>
s2013/06/23 22:02:00 <MyStateCalModel[E412-15422-2362013]::Calculate>
s2013/06/23 22:02:00 <MyStateCalModel[E412-15422-2362013]::DataFusion>
s2013/06/23 22:01:00 <MyForecastModel[E210-15422-2362013]::Calculate>
s2013/06/23 22:02:00 <MyForecastModel[E210-15422-2362013]::DataFusion>
s2013/06/23 22:02:00
<MyForecastModel[E210-15422-2362013]::CompleteCalculation>
s2013/06/23 22:03:00
<MyStateCalModel[E412-15422-2362013]::CompleteCalculation>
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ここで Calculate（）メソッドと DataFusion（）メソッドの呼ばれた シミュレーション時刻に着目します。
未来予測型(MyForcastModel)は Calculate がコールされたシミュレーション時刻 と DataFusion
がコールされたシミュレーション時刻は異なっています。
DataFusionシミュレーション時刻 ＝
Calculateシミュレーション時刻＋δｔ
一方、
現状計算型は、Calculate
がコールされたシミュレーション時刻 と DataFusion
がコールされたシミュレーション時刻は同じです。
DataFusionシミュレーション時刻 ＝
Calculateシミュレーション時刻
これは、要素モデル内部の時間の進め方が異なっているためです。
未来予測型は Calculsteメソッドがコールされた直後、 モデル内のシミュレーション時刻：m_csSimTime
をδｔ 進めます。
従って、DataFusionメソッドがコールされた時には、モデル内のシミュレーション時刻：m_csSimTime は T+δｔ
となっており、DataFusionメソッド内でデータ送信処理を行うと、T+δｔ 時刻の情報として データが送信されます。
現状計算型は、 Calculateメソッドがコールされたのち、シミュレーション時刻は進めずに そのままDataFusionメソッドがコールされます。 モデル内のシミュレーション時刻：m_csSimTime
を進めるのは、 DataFusionメソッドコールの後になります。
従って、DataFusionメソッドコール時のモデル内のシミュレーション時刻：m_csSimTime
は Calculateの時刻と同一時刻であり、DataFusionメソッド内でデータ送信処理を行うと、T
時刻の情報として データが送信されます。 基本的に現状計算型要素モデルにおいて、δｔ（m_csDltTime）を計算に使用することはありません。
第３章で作成した要素モデル「MyDynamicWaveModel」は 上流端に T
時刻の各ブロックの水位、流量、流速から T＋δｔ
時刻の水位、流量、流速を計算しています。 このため 未来予測型「McForcastModelBase」から派生しました。
現状計算型の要素モデル例は、CommonMPと一緒にダウンロードされる「\CommonMP\Source\HYMCO\PublicModelElement」に下記の要素モデルがあります。
McAdjustMultiフォルダー 倍率調整要素モデル： McAdjustMultiModel
McAdjustSlideフォルダー スライド調整（ⅹ＋α）モデル： McAdjustSlideModel
McDimensionConversionフォルダー
次元変換モデルクラス： McDimensionConversionModel
McSumフォルダー 入力値加算モデル： McSumModel
ディバッグ用CommonMPからソースレベルで動作のトレースが行えます。
（動作させるためには \CommonMP\Source\HYMCO\PublicModelElement\「公開要素モデルのディバッグ方法.pdf」
の手順に従って、各プロジェクトをディバッグ用CommonMPソリューション：\CommonMP\Source\HYMCO\OptionImpl\ModelDeveloperExpressEdition\TestModelDeveloperMainExp.sln
に組み込む必要があります。）
ここで作成したテスト用のCommonMP計算プロジェクト（Ex08_CommonMP.lzh）
解凍して生成された、「MyExerciseStep1」フォルダーを \CommonMP\CommonMPData\
下に置きます。
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初版：2013/06/26 |
